2002/09/30

9月30日(月)

 「このところの日記は、愚痴やくだらないネタばかりで、さっぱり面白くない。もう少し「古本屋」という職業に就く者の心の機微をシタタメてはくれまいか」

 こんな意見が届いたとか届かなかったとか。

 なる程、キビときたか。だが、そんなものを書きしたためたら、それこそ愚痴の連発になってしまいそう。

 加山雄三ならばキビといる時が一番幸せなのだろうが、自分の場合、キビの行く道は果てしなく遠い気がしてならない(意味不明)。

 「この店は、私の欲しい本が全部端っこに置いてある」

 昨日、わざわざ遠くから来てくれたカップルの女性のほうが、苛立たしげに呟いていた。

 連れ合いの男性は、「バカ、俺なんか欲しい本全部にプレミアがついてんだぞ」と言って、恨めしそうにショーケースを見つめていた。

 「丸尾末広と花輪和一って、さくらももこの同級生なんですってね」

 スラリとして格好いい女性が、A5の棚にあった丸尾の本を見ながら教えてくれた。ええ!じゃぁ、あの「ちびまる子ちゃん」の花輪君と丸尾君って・・・。

 「ねえ、すごいクラスだったんですね」

 それは、すごいというか、気持ち悪いと言うか・・・。あの花輪君がムショに入ったなんて信じられないけれど、いや、あれはマンガの中でお金持ちにかかれているだけでした。

 「さよなら もうすぐ外は白い冬 愛したのは確かに君だけ そのままの君だけ」

 随分前に買い取って、そのままダンボール箱に突っ込んであった本を整理していたら、本の間から1枚の写真が滑り落ちた。かなり古い写真で、あまり美しくない女性が桜の木の下でニッコリ笑って立っている。

 なんだこりゃ、と裏を見たら、上記の文句が書いてあった。これは知る人ぞ知る、知らない人でも知っている、オフコースの「さよなら」の一節だ。

 いやぁ、笑った笑った。ご本人には申し訳ないが、小1時間もの間、死ぬほど笑わせてもらいました。他の誰かにも見せようかとも思ったけれど、それはあんまりなので、その場で捨ててしまいました。

 「ダンボールなんとかしなさいよ。気になって気になって帰れないでしょ」

 時々ぶらりとやって来ては、2時間ほどあちこちほじくり返してくれる鈴木さんと三浦さんの女性コンビが、いつも言う台詞。そういうワリには二人とも好き勝手に箱を漁りまくっていく。

 二人とも、とても23歳とは思えないほど老成した嗜好を持ち、世のマンガの基準は自分達が定めると言わんばかりの強烈な意見と見識を持っている。

 彼女達に、「何か入った?」と問われるたびに、やり残した宿題の提出を求められているような切迫感に襲われる。

 「ななな、何か何か」とうろたえてみせても、彼女達の嗜好にぴったりおさまるものなんかそう簡単にあるものじゃない。正直言うと、もうこの世には彼女達のご意向に沿うようなマンガは無いとさえ言える。

 もう、自分で描けよ。

 あ、いけねぇ、実名で書いちゃったよ。

 「あたらおろそかではなく、あだやおろそか、ではないでしょうか」

 メールにて、前回の日記の中での表現についてご指摘を頂いた。そうですね、全くその通りです。いや、お恥ずかしい。

 「谷仮面、いくらで買ってくれます?」

 谷仮面とは、ちょっと前にネットオークションで幾ばくか高値を呼び、話題を集めたマンガである。

 自分の場合、ネットオークションと古本屋の相場を別に考えているので、一時話題を集めたとは言え、それで買取の値段を左右させる気は毛頭無い。そのうえ、この質問をぶつけてきた相手にかなりの悪印象をもっているので、まともに買取る気も無い。叩いて叩いて、涙も枯れ果てるほど叩きまくって、逃げ帰るところをふんづかまえて、さらにもうひと叩きするほど買い叩く。

 故に、「(全12巻で)80円!」と答えてあげた。

 もう二度とこんな所に来るんじゃないぞ。

 いや、今日はたくさん書いたね。もう、キビだらけの日記ですね。さすがの桃太郎も、泣いて身を引くキビ地獄悶絶金八責め。

 とにかく、もう帰ります。

本日の売上=15440円(21人)
内訳(
少年漫画?6840円、
少女漫画?1550円、
一般書(小説等)?3300円、
雑誌?3750円)
買取=8560円(7人)
現金残高=6880円
来客数不明
レジ打ち21人
1日一回のランキング投票お願いします。

2002/09/23

9月23日(月)

 自由の女神が北朝鮮にあったらどうだろうか。あるいはエッフェル塔が宮城県加美郡に建っていたらどうだろうか。またあるいはSMAPに五木ひろしがいたらどうだろうか。

 往々にしてモノというのは在るべき所に在ってはじめてその存在価値というものが発生するわけであって、時折見受けられるミスマッチなどというレベルではその価値は計れる筈がないのである。

 この事は、たかが本とは言えあたらオロソカには出来ないことであり、自分としても常に「自分の店にこそふさわしい商品とは何か。また逆にあってはならないものは何か」を考え、ついでに「生まれてきたのは何故か。教えておくのは何か」を遠い雲に聞いてみたりもするのである(何も言わないが)。

 そのデンに則って考えれば考えるほど、「ザ・先生ション!」は忌々しいイレギュラーなのである。もっと言えば、これまで培ってきたJAILHOUSE BOOKの清潔で勤勉なイメージや、他者を寄せ付けない圧倒的な実績など、ナニモカモ全てぶち壊しなのだ。

 薄いレースのカーテンの隙間から差し込む優しく暖かい日差しの中で一杯840円のカフェ・カプチーノをたしなんでいる目前で、死にかけのホームレスにギョウ虫入りの野グソをぶちかまされたようなものである。

 「あっちいけ!」と言えば、ホームレスは立ち去るだろうが野グソ(ギョウ虫入り)は残る。そのまま捨て置いても、なる程野グソ(ギョウ虫入り)は風雨にさらされ人に踏まれてギョウ虫ともどもチリとなりぬるだろうが、それには長い長い時間がかかる。

 その間にこちらは、そのニオイや、なりぬる過程の醜態に耐えねばならない。ひょっとしたら、ああ、そのチリがカフェ・カプチーノに紛れ込まないとも限らない。

 ましてやその日から、折からの不景気によりそれまで一杯840円だったカフェ・カプチーノが、870円に値上げでもされていたなら、それこそフンマンやるかたないではないか。

 誰ぞおらぬか!と周りを見渡しても、閑古鳥一羽いるでもない。ならば自ら行動するより他にない。厭だとか面倒くさいだとかいっている場合じゃない。実績のほうはともかく、イメージは大切にしなくちゃね。

 と言うわけで、かの本を他店にこっそりと置いて来る事にする。

 福は内、鬼は外。

 外は外でも限定された外。

 あっちの店かむこうの店か。

 5秒くらい考えた末、距離的にも経営的にもイメージ的にもぴったりの店に置いてくる事にした。

 そしてとうとう昨夜、夜陰に乗じて店内に忍び込み、カウンターの脇に商品を安置する事に成功した。

 仙台市内の何処かの店に、2冊で1000円(再版でカバーコーティング不良)の「ザ・先生ション!」があります。もし見かけたら、見かけてしまったら、必ず買ってください。間違っても、「あの店だったんだね。見たけど買わなかったよ」なんて話をウチに持ってこないで下さい。そういう話を持ってきた人には、当店で3000円で買ってもらうことになります。

 念のためお断りしておきますが、「ザ・先生ション!」の買取価格は正露丸1錠となっております。

本日の売上=3350円(7人)←圧倒的な実績内訳(
少年漫画?450円、
少女漫画?150円、
一般書(小説等)?650円、
雑誌?2100円)
買取=3150円(4人)
現金残高=200円
来客数11人
レジ打ち7人
1日一回のランキング投票お願いします。

2002/09/16

9月16日(月)

 しばらく、夕日を見ていない。

 勤め人の頃には、夕方になると何もやる気がしなくなって、ぼんやりと薄暮の空など見つめつつ、「俺の人生もこんな風にジワジワと暮れてゆくのだなぁ」と悔し涙とともに帰路についたものだが、近頃は夢中になって仕事をこなしている内に、気が付くととっぷりと日が暮れているような按配である。

 以前は日々の終焉を「ジワジワ」と感じていたのが、今では「とん死」に近い感覚でとらえるようになっている。

 これは危険だと思う。

 正直言うと、日々、日銭を稼ぐのにあくせくしすぎているから、一日と一日の境目があやふやになっている。これが二年後三年後には綺麗に解消されているとは限らない以上、気が付くと「いつ何時とん死してもおかしくない年齢」になっていないとも限らない。

 まぁ、生きている以上、「とん死」に限らず死に方の選択はほぼ不可能なのだからその線はあきらめるとしても、せめて「いつ何時」というところの選択権だけはこちらに委ねられないものだろうかと強く思う。

 厳密に何時何分何秒とまではいかないことは心得ているので、「これとこれとこの状況下以外」くらいでいい。

 自分の場合だと、「排泄中」と「現金を手にしている時」と「九連宝燈をツモった時」以外を希望する。

 何故かと言うと、上記の状況下にある時の自分の顔を想像すると、とても情けなくなるからだ。

 特に、九連宝燈をツモった時の顔には責任がもてない。どうせすぐに逆転されるくせに、その時だけ勝ったような気で得意満面なのだろうから、その後の死に顔と比べられたら、と思うと、もう情け無いやら恥ずかしいやら。

 じゃあ逆に、どんな時に死にたいのか。

 そりゃ決まってます。

 自分は、不幸にまみれて死ぬよりも、幸せの絶頂の中で死にたいんです。

 故に、「ザ・先生ション!」が10万円で売れたときに死にたいです。

 小さいか?

本日の売上=9610円(9人)
内訳(
少年漫画?4660円、
少女漫画?3050円、
一般書(小説等)?250円、
雑誌?1650円)
買取=0円(0人)
現金残高=9610円
来客数11人
レジ打ち9人
1日一回のランキング投票お願いします。

2002/09/09

9月9日(月)

 「長らくご愛顧いただいた当店も、とうとう年貢の納め時がきたらしい。」

 いきなり、書いている自分ですらハッとしてグッときてしまうような書き出しで失礼する。この一文だけで、手放しで喜んでしまう人もいるから早めに否定しておくが、別に「とうとうその時」が来てしまったわけではない。

 実は、先だって在庫の整理をしていたら、「これだけはあってはならない本」が出て来てしまった。その本を見つけた時の心境といえば、まさに死神から死の宣告書を手渡されたような気分だった。

 「ぐ、俺の店にもとうとうこの本が!」

 本を持つ手がワナワナと震え、背中には冷たいモノが一条つたい、膝頭は股間から漏れ出た生暖かいモノでシトドに濡れそぼった。

 これまでの暗く淋しい人生が走馬灯のように脳裏をよぎり、手酷く買い叩いたお客さんの悲しい背中の数々がフラッシュバックした。

 「そうか、そういうことか」と、特に意味は無いけれどなんとなく納得して、改めてその本を眺めなおした。

 その本とは、「ひたか良」の「ザ・先生ション!」(全2巻、マーガレットコミックス)。

 ああ、なんて先生ショナルなタイトル。内容はともかく、このタイトルに秘められた喪失感は大きい。人として何か大切なものを失わなければ、このタイトルは付けられたものじゃない。時代性、とも言えなくはないが(1980年作品)、この年代に於いても、このタイトルは許されたものではない。お陰で、俺の人生を振り返る上で一番大事な「俺の80's」が全て誤解されてしまう。

 この本の何が悪いのか、疑問に思う方の為に簡単に説明すると、この本は主に「気の利かない店の定番商品」なのですね。

 私がこれまでに見知った数々の「気の利かない本屋」には、必ずこの本があったのですね。しかもちゃんと2冊セットで。

 隅々の商品にまで目の行き届く筈のない大型店なら話は別なのですが、どういう訳か10坪クラスの個人経営の店でのみよく見かけた本でした。

 このクラスの店で、この本を置いていた店は(私の知る限り)全部潰れました。10坪程度で気が利かないから潰れたのか、もともと気が利かないから10坪クラスなのか、はたまたこの本自体に本当に悪魔的な力があり、次なるターゲットを求めて日本国中をさ迷い歩いているのか・・・。

 どうする。

 どうすればいい。

 どうして欲しいんだ。

 まったく、憎たらしい本だ。

 第一、なぜ俺の店なのだ。

 他にもっとお似合いの店があるだろう。

 「●曜日」とか「マンガ●●ミニ」とか、もうあと一押しのところまで来ている店に行ったほうが、もっと楽に仕事が運べるだろう。

 ええ、おい!先生様よぉ。

 ・・・まぁいい。

 起こってしまったことを嘆くよりは、これからどうすべきかを考えるべきだ。幸いにして自分は、極めて早い段階でジョーカーの存在に気が付いたわけだから、あとはこの悪魔のカードをどう処分するかだ。

 人道的に考えれば、焼き捨てるのが最上の策なのだが、考えようによっては非常に使える非情のカードなのだから、有効な使い道もあるにはある。

 「あそこ」に置いて来ようかなぁ・・・。

本日の売上=12030円(21人)
内訳(
少年漫画?4930円、
少女漫画?2600円、
一般書(小説等)?3300円、
雑誌?800円、
プレミア?400)
買取=4410円(6人)
現金残高=7620円
来客数34人
レジ打ち21人
1日一回のランキング投票お願いします。

2002/09/02

9月2日(月)

 「あなたにそんなことを言われて、僕は傷つきました!」

 口喧嘩の最中に、唐突にそんな台詞を吐かれて、Gさんはがっくりと膝の力が抜けたという。それまで、さんざんGさんを罵っていたくせに、形勢不利と見るや、突然子供に返ったような口調でそう言い放ったのだという。

 ヤクザ・ユスリ・クズ・カタワ・訴えてやる・死ね・etc・etc・・・先の台詞の前に、相手はこれだけの罵詈讒謗をGさんに浴びせかけていたのだが、Gさんに「君ではまともな話が出来ないから店長と替わりなさい」と言われた途端に、「傷ついた」ときたらしい。

 「参ったよ、本当に。35歳だってさ。情け無くて泣けたよ」Gさんは溜息混じりに苦笑いをしていた。

 事の起こりは、Gさんが某ビデオショップで、海外アニメのビデオを買った所から始まる。

 自分の子供に観せるために買ったビデオは、Gさんの勘違いで字幕スーパー版だった。当然、日本語吹き替え版だと思っていたGさんは、ビデオショップに舞い戻り、吹き替え版と交換してもらえないかと交渉したらしい。

 恐らく、その際のGさんの口調にも何かとげとげしいものはあったのだと思う。で、散々な口論の末、上記の台詞が飛び出したと言うわけだ。

 第三者には推し量れない細かいやり取りはあっただろうとは思うが、それにしても、男には生涯決して口に出来ない台詞と言うやつがあろうと思う。

 恨んでやる・訴えてやる・言いふらしてやる・言いつけてやる・俺のせいじゃない・幽霊が出る・UFOが来る・・・数を挙げたら枚挙にいとまが無いほどあり過ぎる筈だ。

 男と言うものは、事ほど左様に窮屈に生きてナンボのもの、という暗黙の掟がある生き物のはずだ。

 その掟に従えば、「あなたにそんなことを言われて、僕は傷つきました!」なんて、史上最悪の台詞である。この台詞を吐いた瞬間、もはや生きる価値を失ったと言われても仕方が無いほど下衆な台詞である。

 実は、自分はこれまでの人生で、この台詞を聞くのは二度目である。

 今を遡る事5年前に、当時勤めていた所で、いい歳こいたおじさんが本気で言っていた。あまりの情け無さに、私は早退届を出してバッティングセンターで荒れ狂ったのを覚えている。

 本当に傷ついたのならそう言ったっていいじゃん、なんて言うなよ。どんなに傷ついても、血の出るほど奥歯をかみ締めて我慢するという、そういう所で発生する真の価値観がわからないヤツは、ヌクヌクと暖かい部屋でブクブクと太ってなさい。そうして、一般社会へ出て来てはいけません。

 まぁ、大雑把に言うと、「引っこんでろぃ!」ということです。

 近頃、いい歳こいた大人の言葉の使い方に絶望しているので、こういう偏った事を書いてしまったのですが、ちょっと偏りすぎでしたかね。

 でもまぁ、このところ右を向いても左を見ても、トホホな男の話が多すぎるので、このくらい書いてもいいんじゃないのかな、と思うわけです。

本日の売上=13510円(23人)
内訳(
少年漫画?4540円、
少女漫画?1980円、
一般書(小説等)?4750円、
雑誌?2300円)
買取=6350円(8人)
現金残高=7160円
来客数不明
レジ打ち23人
1日一回のランキング投票お願いします。