2004/04/26

4月26日(月)

 私はロックンローラーなので、店にギターを常備しています。ボロっちい安物のギターですが、体になじんだ愛いヤツです。閉店後や、雨で客足の悪い日にたまに弾きます。その程度です。

 ギターをたしなむ方ならば、この「たまに弾く」という感覚を理解していただけると思います。熱心に弾くわけではなく、テレビなどを見ながら「時々しゃべる会話の相手」の代役をギターにさせる程度の感覚です。

 ところが、ギターを弾かない人にとっては、この楽器はとてもキザったらしく見えるらしく、「何これ?彼女相手に弾いたりすんの?」などと言われることもシバシバあります。恥ずかしながら私は、これまでただの一度も特定の女性に向けてギターを弾いたり歌を歌ったりしたことはありません。そういう機会に恵まれなかったというのもありますが、何よりもそういう行為が人として恥ずべき行為であると認識しているからです。

 以前バンドを組んでいた時に、新曲をメンバーに披露するのですら大変に抵抗があったくらいですから、それを衆人観衆の前で披露などしたら、恥ずかしさのあまり心臓が停止してしまうかもしれません。とは言え、バンドを組んでいる頃には何度か人前で演奏する機会もありました。しかし私は運良くバックでしたので、こうして生きながらえております。長い間私の前でフロントを勤めていたY君は、私の命の恩人です。大変感謝しています。

 さて、世の中にはある特定の物体と合致することにより、途端に人格が変わる人が多くいます。

 例えば、普段は温厚なのに車のハンドルを握ると凶暴になるとか、無口な人がカラオケのマイクを握ると「一人ジュークボックス」になるとか、その他、お酒や覚醒剤などで、人格や、時には人生まで変えてしまう人がいます。それらの多くは、温厚→凶暴、無口→饒舌、病院嫌い→すすんで注射、といった具合に、エネルギーをマイナスからプラスへ一気に転換させるケースが多いようです。

 かく言う私もギターを抱えると途端に人格が変わるのですが、何故か、強気な私→シャイなボク、といったように、プラスからマイナスへ転換されてしまいます。

 鶴の恩返しではありませんが、私がギターを弾いている時には絶対にドアを開けてはいけませんし、ましてや歌声を盗み聞きなどしたら、おそらく1週間以内に私の呪いで死んでしまうでしょうから細心の注意が必要です。そのくらい気分的にマイナスになります。わざわざヘコんだ気分になるためにギターを弾いているといっても過言ではないくらいです。

 それでも聴きたい。呪い殺されてもいいから聴きたいの、オ・ネ・ガ・イ。という人には条件を付けざるを得ません。その条件とは、お互い全裸でベッドの上で、というものです。ギターを持つとシャイになってしまう私ですが、ベッドの上で全裸になったらまた違う人格になるので、危険度は一杯です。正直、様々な意味で責任がもてません。

 これなら誰も無理して聴こうとは思わないはずです。言うまでもありませんが、この条件は女性限定です。男性の場合は問答無用でお断りです。ましてや上記の条件でとなったら100億円貰ってもお断りです。

 もちろん、その価値も無い歌声だということは付け加えておかなければなりません。

本日の売上=3300円(8人)
内訳(
少年漫画=1450円、
一般書=1100円、
雑誌=750円)
買取=4840円(2人)
現金残高=?1540円
来客数=10人
レジ打ち=8人
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2004/04/22

4月22日(月)

 なんだかんだで開業後丸3年を経ました。世間的には絶対に認知されないような超低空飛行ながらも、地上僅か数センチのところをユルユルと飛び続けてまいりました。

 傍から見ると、決して飛んでいるようには見えないでしょうが、本人は至って心地よく飛び続けているつもりです。

 こういう場合、一般的にはお客様のお陰としてウヤウヤしくお礼を申し述べるものなのでしょうが、そういう取って付けたような言葉は決して人の心を打ちませんので、ここはひとつ、学術的な見地に立って冷静に「3年もった原因」を究明してみようかと思います。

 開業当時、他の同業者からは「どうせ自分の手持ちの本を売りつくしたらそれで終わりにならぁ」と言われ(ていたらしい)、警察からは「いつか逮捕してやるからな」と追い詰められ、税務署からは「追徴課税の怖さを死ぬほど思い知らせてやる」と宣告され、地元住民からは「住民パワーを甘く見るなよ」と詰め寄られ、四面楚歌の状態での開業に大いなる不安を覚えたものです。

 始める前から何故そんなに多くの敵がいたのか、原因は未だに分かりませんが、おそらく、私の美貌を妬んでいただけだったのではないかと予測されます。何故そう予測できるのかというと、今まで私の性格や商売のやり方には様々な誹謗中傷が飛び交いましたが、この美貌に関してはついぞ触れられたことがありません。

 一般的に人間は非の打ち所のない部分に関しては強い嫉妬を覚えるものなので、おそらくそうなのではないかと予測するに至りました。

 現に私の店は女性客が圧倒的に多く、中には署名・捺印を激しく求める人もいるくらいです。更に言えば、シャッターを降ろした後も、いつの間にか入り込んでいたお客さんが本棚の影からジッとこちらを見つめていたりします。

 掛かってくる電話もやはり女性が多く、お金を貸してあげるとか、あなたのお店を宣伝してあげるとか、いい儲け話があるのよ、といった具合に、私に怪しくにじり寄ってくる内容ばかりです。さすがにちょっと照れるなぁ。

 最近では、店に来る前に立ち寄った公園で桜を見ていたら、遠くから婦警さんが走りよってきて、「枝を折ってはいけません!」と言われました。この美貌のせいで、挙動の一部始終を見られていたってわけです。私はシブシブ木から降りたものです。

 「石の上にも三年」といいますが、私は美貌の上に三年いたわけです。正確には36年間美貌の上に座りっぱなしだったのですが、開業前の私は美貌を鼻にかけるようなマネはしていませんでした。開業後に、私の美貌目当てのお客さんが増えるに従って、徐々に鼻にかけるようになってしまったのです。

 それだけで3年持ったわけですから、私の美貌にはかなりの物があるのではないかと鏡を見るたびにうっとりと思うのですが、言い換えれば、それに頼るばかりで他に工夫をしなかったせいで、今日に至るまで低空飛行を続けてしまうことになったのだと思います。

 では今後、どういった工夫が必要なのか。美貌に磨きをかけるのが一番手っ取り早いのだとは思いますが、私も今年齢37を数えますから、何時までも美貌頼りというわけにも行きません。100万ドルの笑顔が90万ドルの笑顔に落ちただけで世間様は目もくれてはくれなくなります。やがてそれが80万ドル70万ドル、10万ドル、5ドルと落ち込み、美貌が貧乏に摩り替わる日もそう遠くは無いのだと思います。

 そうなる前に、若く美しくお金持ちの女性と結婚してしまうという計画もあるのですが、どうもそれには美貌よりももっと重要なものが必要らしいです。

 なんだか相変わらずよく分からない内容になってしまいましたが、「4年目もこうだ」という意思表示と思っていただくしかないようようです。本当にすいません。

 皆様、3年間ありがとうございました。
 そしてまた、今後ともヨロシクお願いします。
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2004/04/12

4月12日(月)

 先週の日記を書いた後、私の先輩の「ほ●の舎(いえ)」の店長とお話をする機会に恵まれました。

 かの店長は大変に尊大な方で、普段はよほどの事がない限り私のような矮小な人間とは口をきいてはくれません。それが、その日はよほど売上が良かったらしく大変に上機嫌で、あちらからお声をかけていただきました。

 「おう、オマエ、日記読んだよ」

 「はぁ、さいでございますか。ありがとうございます」

 「でもオマエあれだなぁ、すねてやがんなぁ」

 「そうですか?そんなつもりは無いんですが」

 「なんかよぉ、持って回った言い方でよぉ、”寂しい寂しい”書いてんじゃねーよ」

 ボカ!

 「そうでしょうか。そんなに寂しさにあふれていたでしょうか」

 「デショーカじゃねーんだよ」

 ボカボカ!

 「でも、あんなモノ、オレの本当の寂しさの10分の1くらいですよ」

 「ほーら、本音吐きやがった。スカしやがって」

 ボカボカボカ!

 「オレが本当の事書いたら、世の女どもがキューンとなって、そりゃぁもう大変なことになります」

 「キューンか?こら。キューンときやがったか」

 「そりゃもう、ドキューン、です」

 「大体が30も半ばを過ぎてまだ独りなんだから、それだけで女ならずともキューンとくらぁな」

 「そんなもんでしょうか」

 「そらそうだわな。みろ、オレなんか女房のほかにあっちこっちに・・・」

 「ははぁ、なるほど」

 「で、そのキューンって話は何なんだ?言ってみろよ」

 「ええと、例えばですね、オレ、ズボンがよく破れるんです。それも膝の部分ばっかり」

 「地べたを這いずり回って自販機の下ばっか覗いてっからじゃねーのか」

 「それじゃキューンとはならないでしょう」

 「それじゃ何なんだよ」

 「いつも部屋で独りで膝抱えてるからです」

 「ほほぉ、だがそれじゃ1キューンだな」

 「1キューンですか」

 「他には?」

 「今年は年賀状が一枚も来ませんでした」

 「2キューン」

 「ゴミの分別に詳しくなりました」

 「0キューン」

 「独り言のギャグが面白くなりました」

 「7キューンだな、それ」

 「寝る前に、ヘヘ、と笑ってから寝るようになりました」

 「もういい。もうやめろ。くだらねぇ」

 「そうですか?まだあと17個くらいあるんですが」

 「気色悪いよ、オマエ。もう帰れ帰れ」

 「そうやって店から追い出されることが多くなりました。これは何キューンですか」

 「帰れって言ってんだろ、この野郎」

 「無愛想だと掲示板に書かれました。これは?」

 「・・・」

 「地震・雷・火事・早漏って言われました。これは?」

 「オマエ、本気で怒るよ。か・え・れ」

 「ラーメン屋に行くと、必ずカウンターの一番端の席に案内されます。この間のバレンタインデーでは、3日も過ぎてから開封跡のあるチョコレートを渡されました。喫茶店に入ると、大概小汚いおっさんと相席にされます。銀行に口座を開きに行くと断られることが多くなりました。ネット出品用の写真を撮ると心霊写真になることが増えました。オカマバーのおねーちゃんに誘われることが多くなりました。リンゴをかじると・・・」

 「もうやめろやめろ!ぶっ殺すぞ!オラァ!」

 「だから・・・だから一人で車を転がしてるほうがいいって書いたんじゃねーか!分かってんのか、コルァア!ええおい!どうなんだシャチョー!」

 「悲しいときー!」

 「悲しいときー!」

 「ケータイが一度も鳴らないうちにバッテリー切れになったときー!」

 「一度も鳴らないうちにバッテリー切れになったときー!」

 来週はもう少しまともな話を書きます・・・。

本日の売上=9150円(11人)
内訳(
少年漫画=300円、
少女漫画=1250円、
一般書=1600円、
雑誌=2000円
プレミア=4000円)
買取=700円(1人)
現金残高=8450円
来客数=15人
レジ打ち=11人
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2004/04/05

4月5日(月)

 歌の文句じゃないけれど、最近は満月がとても綺麗なので遠回りをして帰っています。

 一日中店の中に閉じこもっていると気持ちがどんどん鬱になっていくので、少しでも時間があればなるべく遠回りをしたり寄り道をしたりするようにしています。

 仙台は田舎とは言え、街の中は夜でもそれなりに明るいので、星がよく見えません。なので私はいつも郡部方面へ車を走らせます。山の麓辺りになると月と星と寂しい街灯しか明かりがなくなるので、真っ暗でとても清々しいです。

 道端に車を停めて月などを眺めていると、今なら泥棒にでもなれるなぁ、と思う事もありますが、田舎ではせいぜい物干しの下着くらいしか盗むものもないし、それだってきっとくたびれたおばさんのモノに違いないので、また車を走らせます。

 夜が清々しいとは言え、何時までも暗い中を走っていると、次第に明かりが恋しくなります。手っ取り早く明かりと出会うには自動販売機が最適なのですが、こういう場合、田舎だとそれを探すのにも一苦労です。

 しかし、恐るべきは飲料会社の営業努力。日本という国はどこへ行っても自販機が設置されているのです。いったい、こんな人気の無い所で誰か買う人間はいるのか、それよりもこの機械の電気はどこから供給されているのかと不思議に思うこともシバシバあります。

 ようやく見つけた謎の販売機でコーヒーなどを買って、また月を眺めていると、これまた不思議なことに、自転車に乗ったおばちゃんとよく出会います。夜中の2時3時に、こんな山の中で何故おばちゃんが!と思うのは向こうも同じようで、汚いコートを着た男が、何故こんな時間にこんなところに立っているのだ、という目で睨み付けてきます。

 向こうにしてみれば身の危険を感じているのでしょうが、それもまた私も同じことで、おばちゃんが必ずしもこの世のモノではないのではないかなどと考えて、うそ寒さを感じます。

 お互いに気持ち悪いので、私は車に飛び乗り、おばちゃんはペダルを強くこいでそれぞれ逆の方向に猛スピードで去っていくのです。

 私はドライブに限らず何でもかんでもメクラ滅法走り回る性質なので、「走る」と決めたときの速度にはかなりのものがあります。しかし皆様ご想像の通り、この性質には多くの弊害があります。私の人生と無関係でいられる皆様には笑い話でも、本人にとっては死活問題になる場合もあります。その辺が、私が人々の信頼を得られない要因のひとつになっている事は確かです。

 古本屋に身を落とす以前、10年間に渡って(真面目に)勤めていた仕事は、宮城県内の浄化槽の法廷検査を行う仕事でしたから、それはもう県内くまなく走り回ったおかげで裏道にもそれなりに詳しくなっていてしかるべきなのですが、今はどこを走っても初体験な感覚です。なので、自分が今どこにいるのか、暖かい布団へ(本当は冷たい)もぐりこむためにはどこをどう戻ればいいのか分からなくなることが多いです。

 恐怖のおばちゃんを振り切った私は、例の如く見知らぬ土地に迷い込んでしまいます。そこは、街灯も民家もなく、ただ月の明かりだけが山の木々に降り注ぐ神と獣の聖地のようです。神も仏も信じない一介の古本屋がこんな所に留まっていたら、神か仏の怒りを買い一生涯結婚のできない体にされてしまいそうです。

 好きでドライブに繰り出したというのに、1時間後にはあたふたしている。それもまた私のこれまでの人生を見事なまでに象徴しています。しかし、そういう時は分からないままにだらだらと走り回り、見覚えのある道を探すか、さもなくば走りやすい道を走りやすい方向へ走り続けるようにします。そうすると不思議にいつの間にか知った道に出ています。

 時々、本当に知らない道に出てしまうこともありますが、そういう時は「別に俺一人が道に迷って死んだって誰も困らないさ」と考えるようにしています。

 東の空がほんの僅か明かりを滲ませる頃、私は結局は家にたどり着きます。今まで、帰れなかったことが無いのです。それもまた不幸なことだとも思います。いつかきっと絶望的に道に迷って野垂れ死にしたいと考えつつ、ひどく冷たい布団にもぐりこむのです。

 もっとも、帰ったときに布団が温まっているような生活を得れば、絶望に向かってドライブするような真似もしなくなってしまうのかも知れません。

 誰か心の広い方、寂しい私を拾って布団の中で暖めてくれませんか。

本日の売上=6180円(9人)
内訳(
少年漫画=2550円、
少女漫画=430円、
一般書=1250円、
雑誌=1950円)
買取=4900円(1人)
現金残高=1280円
来客数=12人
レジ打ち=9人
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